ベートーヴェンにも影響を与えたピアノ音楽
チェコ楽壇の祖ドゥシェク没
ドゥシェク(1760〜1812)作曲、ピアノ・ソナタ変ホ長調《パリへの帰還》より第1楽章
18世紀後半のチェコに、ヤン・ラディスラフ・ドゥシェク(ドゥシークとも)という作曲家・ ピアニストがいた。当時のチェコはオーストリア帝国の支配下にあった小国だったが、芸術文化の先進国であった。モーツァルトより4歳年下、ベートーヴェンより10歳年長のドゥシェクは、19歳からリサイタル活動を始めた。その頃はまだ、作曲家=演奏家だったから、いわゆるコンサート・ピアニストとしては最初期の一人で、歌うようなレガート奏法(滑らかに奏でる)と名人芸的なテクニックは大いにもてはやされ、イギリス、フランスからロシアに至るヨーロッパで精力的に活動した。
作曲家で優れた教師でもあったドゥシェクが残した作品は、ピアノのための協奏曲と独奏曲がほとんどである。例えば、CDで聴ける《パリへの帰還》と題されたピアノ・ソナタにも、多彩な技巧と多感な情趣が感じられ、ベートーヴェン、メンデルスゾーンなどのピアノ音楽を予告している。
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