America Quartet

ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲《アメリカ》作品96


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親しみやすいメロディーと気取りのない感情表現は、達者なヴィオラがいないとつまらない、《アメリカ》カルテット

アメリカでの作。1893年の夏、ドヴォルザークの故郷であるボヘミアからの移民の集まっていたアイオア州のスピルヴィルという村で、夏の間に作曲された。達者なヴィオラがいないとつまらない。

ドヴォルザークは、1892年(51歳)に渡米し、約2年間、ニューヨーク国民音楽院の初代校長としての責務を果たした。そしてその間に、「交響曲 第9番《新世界より》」、「チェロ協奏曲」、「弦楽四重奏曲第6番」《アメリカ》といった名作を相次いで生んだのだった。

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ドヴォルザークの作曲した弦楽四重奏曲は、作品番号のないものまで含めると全部で13曲もあるが、その中では、この「第6番」《アメリカ》が抜きん出て優れている。わずか15日という短期間に作曲されたこの曲は、黒人霊歌を思わせるような旋律が使われているので、昔は《ニガー》(二グロの蔑称)と呼ばれていたが、人種問題のやかましい今日では、この名称は使われない。第1楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポ、第2楽章レント、第3楽章モルト・ヴィヴァーチェ、第4楽章ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ。全体に民族的色彩が強く、親しみやすい旋律が豊富に使われているのが大きな特徴で、とくに、おおらかな気分の第1楽章と、感傷的な民謡調の旋律の美しい第2楽章は、間違いなく感動を誘う楽章である。

弦楽四重奏曲 第6番 ヘ長調 作品96《アメリカ》

ドヴォルザークの弦楽四重奏曲はいい曲があるのですが、不思議なことにあまり演奏されません。全部で13曲のうち、せいぜい2番から8番くらいまでの曲しか演奏されず、その中でも6番目に当たる《アメリカ》は、圧倒的に数多く演奏されています。アメリカに滞在中に書いた最も有名な三曲中の一曲です。

昔はこのヘ長調のクヮルテットをよく《ニガー》というニックネームをつけて呼んでいました。これは黒人霊歌に似た旋律がたくさん現れることからつけられたものと思われますが、今ではもっぱら《アメリカ》の愛称が用いられるようになりました。そもそも NIGGER という言葉は、戦争中にアメリカ兵たちに使われた JAP と同類で軽蔑の気持ちが込められており、私たち日本人やヨーロッパの人たちは感じなくても、黒人たちにとっては耐えられない嫌な言葉らしい。最近では黒人暴動が相次いで起き、人種問題にはとりわけ敏感なアメリカでは、NEGRO という言葉すら蔑意が含まれているとして気を使うくらいですから、人種問題とは何の関わりもないドヴォルザークのクヮルテットに、黒人霊歌に似ているというだけの理由で《ニガー》などという危険な別名をつける必要はさらさらないわけです。

それにしてもこのクヮルテットは、いうにいわれぬ独特な魅力を秘めています。まず冒頭、2小節の伴奏的音形にのっていきなりヴィオラがドヴォルザーク節と言えるようなアレグロの主題を弾き始めるのですが、低いC線から始まるヴィオラの鼻にかかったような哀愁のある音色は、実に鮮烈な印象を与える効果を持っています。

このヴィオラという楽器は、弦楽器群の中では役回りからいって内声部担当ですから、いわば縁の下の力持ちみたいなもので、日頃は目立たぬ存在です。弦楽器を女性に例えれば、ヴァイオリンは派手なお嬢さん、チェロは雄弁なナントカ女史、それに対してヴィオラはさしずめ結婚して何年目かの世話女房、普段は割烹着か何かを着込んでもっぱら亭主の飯を作り、洗濯に明け暮れている女房が、突然ある日、見るも鮮やかな洋服を着こなし、色気を振りまきながらしゃなりしゃなりとメイン・ストリートに現れ出でて、彼女を知る男どもをびっくり仰天させるような効果を、この曲の冒頭は持っています。

ヴィオラ奏者が女性だったりすると、この印象はさらに強烈なものとなります。

レコードの手引

ヤナーチェク弦楽四重奏団とスメタナ弦楽四重奏団の2枚を推す。ヤナーチェク弦楽四重奏団盤は、この曲のもつ民族的情緒を洗練された感覚で摘出した見事な演奏で録音も良い。スメタナ盤は、民族的な共感に裏打ちされた密度の高い演奏で、アンサンブルも完璧だ。録音はスメタナ盤の方がやや良い。

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