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作品のうえに異国情緒を盛り込むといった手法は、後期ロマン主義や近代音楽の中にしばしばみられることだが、ラロの活躍した19世紀の後半は、特にそれが流行していた。しかし、ラロの異国趣味は、その時代の思潮がどうであれ、生得のものであった。ラロはフランスの作曲家であるが、彼の体にはスペインの血が流れていたからである。
ラロは、弦楽器の好きな人で、ヴァイオリンはもとより、ヴィオラやチェロの演奏もうまく、自ら弦楽四重奏団を主宰し、室内楽の演奏と研究に全力を傾けた時代もあった。そして、こうした若いころの地味な努力が、結局、後年、この「スペイン交響曲」や「チェロ協奏曲」で見事な花を咲かせることになるのである。
ラロの異国趣味は徹底していた。それは4曲の「ヴァイオリン協奏曲」のうちの3曲までに、それぞれ外国の国名がつけられていることでも、よくわかる。題名のないのは「第1番」だけで、「第2番」は「スペイン交響曲」、「第3番」は「ノルウェー幻想曲」(1880年)、「第4番」は「ロシア協奏曲」(1883年)となっている。
この「スペイン交響曲」は1873年(50歳)に作曲され、2年後の1875年にパリのコンセール・ポピュレールで初演され、大好評を博した。そして彼の作曲家としての地位は、この曲によって不動のものとなったのである。その時、彼は52歳だった。52歳といえば、既に人生の終着駅に近い年齢であるが、彼の作曲家としての充実した人生は、実に、この時から始まったのだった。まさに晩成型の作曲家といってよい。
この曲は「スペイン交響曲」という題名どおり、極めてスペイン情緒の濃い作品だが、交響曲とはいっても、明らかに独奏ヴァイオリンとオーケストラとが丁々発止と渡り合うヴァイオリン協奏曲で、楽章も、次のように5つもある。第1楽章アレグロ・ノン・トロッポ、第2楽章スケルツァンド、アレグロ・モルト、第3楽章インテルメッツォ(間奏曲)、アレグレット・ノン・トロッポ、第4楽章アンダンテ、第5楽章ロンド、アレグロ。
ロイターは、この曲について「交響曲という題は、あまりにも仰々しい。この曲は、むしろ交響的組曲である」と述べているが、この言は正しい。楽章が5つもあるのは交響曲よりも組曲に近い性格だし、独奏ヴァイオリンが縦横に活躍するというのは、完全にヴァイオリン協奏曲である。だから、交響的組曲風のヴァイオリン協奏曲とでもいった複雑な性格を持っているわけだ。この曲は、“パガニーニの再来”といわれたサラサーテの技巧を頭に置いて作曲され、サラサーテに捧げられ、彼によって初演された曲だけあって、演奏には、まず超絶的な技巧が要求されるし、また、交響曲とあるように、全体に、すこぶるシンフォニックな規模と色彩とを備えているのが大きな特色である。
この曲は、よく第2か第3楽章を省略して演奏されることがある。特に第3楽章を省略するといった悪癖は、サラサーテが初演の時に省略して以来、いわば習慣的に行われてきたものだが、第3楽章など、スペイン色の濃厚な、実に良い曲である。ロイターも「この2つの楽章を省略することは、作品に対する興味という点からいっても正しくないと考える。なぜかというと、これらの楽章は、なかなか独創的に書かれているからである」と述べている。
レコードの手引
レコードを買われる場合も、まずそのレコードが省略演奏であるかどうかをしかと確かめてからにしてほしい。演奏者の趣味によって、それがまちまちだからである。LPレコードの名盤では、グリュミオー(ヴァイオリン)、ロザンタール指揮、ラムルー管弦楽団(PHILIPS)の全曲演奏に止めを刺す。これは、ラテン的な軽さと熱っぽさとを兼ね備えた卓越した演奏で、第1、5楽章の激しさ、第4楽章の抒情味は比類がない。このレコードは、モーツァルトの演奏とともに、グリュミオーの代表的なレコードといってもよい。余白には、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」と「ハバネラ」が収録されているから、組み合わせという点でも申し分ない。この他では、フランチェスカッティ、コーガン、シェリングの演奏が、それぞれ個性的な表現で面白い。わたしは演奏、録音ともこのグリュミオー盤に強く惹かれる。
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