愛がそこから湧き出るように、その音符を愛してください*バルビローリ指揮BBC響 ベートーヴェン・交響曲第3番《英雄》
通販レコードのご案内バルビローリのベートーヴェンは比較的珍しく、稀少レパートリーのコレクターズアイテム。《英初期カラー・スタンプ・ドッグ盤》GB EMI ASD2348 バルビローリ ベートーヴェン・交響曲3番「英雄」 バルビローリ卿晩年の演奏ですが、音楽は冒頭から表現意欲にあふれ、遅いテンポの中にさまざまな要素が、丹念かつドラマティックに描き込まれて情報量はとにかく膨大。この指揮者が元来、劇的なものへの強い志向を持っていた事を十分に窺わせるユニークな名演です。
“良質なワインのように、年を経るに連れて芳醇な味わいを醸しだした指揮者”と評されるように、バルビローリは典型的な大器晩成型で、極めてヒューマンな人柄とリハーサルのたびごとに『その音符を愛してください、愛がそこから湧き出るように』と楽員に呼びかけたという音楽への奉仕者の姿は、聴衆と楽員の双方から敬愛を浴びた。
1967年ステレオ録音の『英雄』は、ロマン主義的なベートーヴェン ー しかも〈ロマン主義的傾向〉、ロマンティックな情緒と言い換えたほうが理解しやすいだろう ー がデフォルメされて表現されている。激しく好みの分かれる演奏だろう。この演奏は、バルビローリの音楽を愛する人々でなければ、なかなかに容認できない程の個性を備えており、この演奏によって、場合によってはベートーヴェンのこの交響曲を誤解してしまうという危険さえ孕んでいるとも言える。しかし、わたしはここに ー 別項を立ててもいいくらいに ー 拘りたい。折しも同時期に起こる〈古楽器演奏〉それを尻目に徹頭徹尾、晩年のバルビローリ流に染め上げられた良く歌い、伸びやかな、発見も有るベートーヴェンだ。
際立って長いのが第2楽章であり、音楽が止まってしまうのではないかと思うほどギリギリ瀬戸際のテンポで、一音一音を慈しむかのように音を紡いでゆくそのスタイルは、彼のマーラーにもつながるような節がある。進めば進むほどテンポが遅くなり、それはあたかも大地のうねりのようである。しかし決してテンションが下がることはなく、聴く者の耳を離さないパワーと緊張感と魅力に溢れている。ウィーン・フィルは都合がつかなかったのか、彼が後世に遺したいベートーヴェンを演るには当時のハレ管では崩壊しただろう。そこでBBC交響楽団の技量と底力に期待し、最善の可能性を感じたのだろう。遅咲きの狂い咲き、ならぬ。翌年急逝する最後の大輪、ギリギリのチャンスだったのだ。バルビローリのベートーヴェンの交響曲録音は意外に少なく調べた限りでは次の5回となります。
ベートーヴェンの交響曲第4番:ニューヨークフィル(1936年録音)/交響曲第5番:ハレ管弦楽団(1947年録音)/交響曲第1番:ハレ管弦楽団(1958年録音)/交響曲第8番:ハレ管弦楽団(1958年録音)/交響曲第3番:BBC交響楽団(1967年録音)。
この時代の巨匠と言われた指揮者のなかでは、異例と言っていいほどの少なさです。そして、最もバルビローリらしさが炸裂しているのが、この「エロイカ」でしょう。スローなテンポで朗々と歌われる「エロイカ」は、バルビローリだからこそ成し得た名演だと思います。是非、一度聴いて下さい。
詳細掲載ページ
(さらに…)...